ガン ストレス


ガンとストレス

ストレスの多い時代です。はたして、慢性的なストレスは、ガンを引き起こすのでしょうか?

或いは、生真面目な人は、ガンになりやすいのでしょうか?

精神的に安らかであれば、ガンの進展は遅くなるのでしょうか?

医学界において、精神腫瘍学(Psycooncology)と言う言葉が使われるようになってきました。
精神的なこととガンとの関係を調べる学問です。

重大事件がガンを起こすか?

持続したストレスガンを引き起こす可能性は充分あります。

ストレスはガンに対する免疫力を落とし、ついにはガンが成長していくかもしれません。

免疫力が落ち続けていれば、ガンになりやすいことは、例えば、免疫抑制剤を長年飲んでいる人はガンにかかりやすいことでもわかります。

人生における重大事件(離婚、倒産、失業等)が、後年のガンの発生と関係あるかどうかについては、いろいろな研究がありますが、はっきり関係ありとする研究は少ないようです。

このような事件は誰でも多少は経験するものであり、むしろ事件に遭ってからの対処の仕方、気の持ち方次第で、ガンになりやすくも、なりにくくも出来るのではないかと思います。

鬱(うつ)とガン

最近の研究では、うつ状態の人を追跡しても、ガンが起こりやすい傾向は認められません。

調査時うつであっても、これが長く続くとは限らないからかもしれません。

死別とガン

近年の研究では、死別体験は、ガンの進展の1因子とはいえないようです。

男性には、妻の死別体験は、死亡率を高める一因ではありますが、それは、偶発事故、心臓病、感染症等によるもので、ガンは増えていません。

さらに、夫を亡くした婦人はガン死亡が増えません。

ガンを起こしやすい性格はあるか?

972人の医師を30年間追跡したデータでは、孤独な人は、実践的で感情表現の豊かな人に比べ、ガンになりやすかったのです。

トモショクとヘラ ーはC型という概念を提唱しました。

感情特に怒りをあまり表現しないで我慢し、権威には従うタイプです。その分ストレスがたまりやすいと考えられます。

悪性黒色腫の大きさや進展とC型との間には、関連が認められました 。

他のガンにおいてもこれを支持する報告もありますが、関係ないとす る報告もあります。

今後の研究が待たれます。

心理療法とクオリティ・オブ・ライフ

ガンと告知されてからの精神的葛藤は大変なものです。しかし1人で悩むのではなく、専門家のカウンセリングを受けたり、誰か仲間と悩みを共有できれば、多少気持ちがすっきりするかもしれません。

欧米では、ガンやエイズの患者に対して、家族や友人、ボランティア、心理療法家、医師、ソーシャル・ワーカー、宗教家等から成る支援グループが、定期的に集まりを持ち、患者の大きな精神的助けとなっています。

残念ながら日本ではまだこのようなグループは殆どないようです。欧米ほどガン告知が進んでいないこともその理由の一つでしょう。

最近医学界で、クオリティ・オブ・ライフという言葉が使われるようになってきました。生活の質と言いますか、ただ単に生きているというのではなく、より快適にいきいきと生きる生活を目指したいという考え方です。

ガン患者に対する個人的なカウンセリングや励ましなどが、クオリティ・オブ・ライフにいい影響を与えることがわかってきました。

ある研究では、女性特有のガン子宮体ガン子宮頚ガン卵巣ガン等)の患者に対して、個人的あるいはグループの励ましがある場合は、何もない場合より、明らかに患者はより落ち込みが少なく、心配が少ない傾向がありました 。

いろいろなガンの患者に対し、個人的な励ましを週に1回4週にわたって与えると、何もない患者よりも、より倦怠感が少なく、元気がよく、欲求 不満・抑鬱・不安・無感動が少ない傾向を認めました。

別の研究では、放射線療法を受けているガン患者に個人別に支援的なアドバイ スを与えますと、10週後には、より精神的に元気な傾向を認めました。

乳ガンで手術を受けた妻と夫に個別にカウンセリングを与えると、妻の落ち込みが少なくなります。

これらの結果は当然だと思います。

心理療法と苦痛軽減

抗ガン剤治療には辛い副作用が起こりやすいものですが、リラックス法の講習を受けたガン患者は、カウンセリングを受けたガン患者や、こういった指導を受けないガン患者に比べ、抗ガン剤の副作用である吐き気や嘔吐を訴えることが少なかったことが報告されています。

精神的因子はガンの経過に影響するか?

ガンに対して闘争心旺盛な人がより生存し、あきらめている人は早く死にやすいのでしょうか?

グリアー等は早期の乳ガン患者62人を追跡し、4群に分けました。

A:闘争心で対応した人(前向きに生きる)
 B:病気を否定した人(ガンだとしても大したことがない)
 C:冷静に対処した人(もうどうしようもない、医者に任せよ う)
 D:絶望感を持った人
です。

10数年追跡した結果、生存率が一番高いのはA、次にBCDの順でした。

スピーゲル等は、乳ガンの再発患者に対し、1年間精神的指導をすることの影響を研究しました。

50人がくじ引きで指導を受けるグループに選ばれました。週毎の90分のグループ治療が1年間続けられました。

グループは、患者と精神科医やソーシャルワーカー、さらに乳ガンの治療を受けて今はおさまっている治療者から成ります。

集まりは、死とは、死にゆくこととは、病気 が家族に与える影響、治療に対する心配、医師と患者との人間関係、どう生きていくか、と言ったことについての話し合いから成り立っています。

一方36 人はこういったグループ治療を受けませんでした。何も指導を受けない患者に 比べ、グループ治療を受けた患者は、生存率が高く、48カ月後には、3分の1が残っていたのに、受けない患者は全員死にました。

指導を受けたグループの平均生存月数は36.6カ月、受けないグループは18.9カ月でした。

受けた グループは気分の落ち込みが少なく、半分の痛みしか訴えませんでした。

心理療法では、ガン患者の寿命は延びないと言う報告もあり、心理療法の質も問題で一概には言えないものの、ガンの心理療法は大いに期待できる分野のように思います。

結論

簡単に言えば、精神とガンとはある程度関連があると言えるでしょう。

あまりストレスがたまらないようにしておくことは、ガンの予防上、また進めないためにも、いいことのように思われます。

ガンの治療に関しても、心理療法が効果を持つ可能性が考えられ、いろいろな試みがなされるでしょう。

ただそのためには、ガンの告知が前提ですので、まだ日本では、欧米のようにはいかないでしょうが、状況は変わりつつあります。精神腫瘍学についての今後の研究の成果が期待されます。


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