糖尿病 遺伝 肥満 運動 食事


糖尿病の危険因子

1遺伝

インスリン非依存型糖尿病は遺伝傾向があることが知られています。しかし一 卵性双生児で発病率が全く同じではないため、環境因子の関与が重要であることもわかっています。親兄弟に糖尿病があれば、自分も罹りやすいと考え、用心することが勧められます。しかし全く遺伝がないと考えられる人にも糖尿病は見られますので、食生活などの環境要因は大きいと考えるべきです。

2肥満

明らかに、太っている人に糖尿病がよく見られます。肥満が糖尿病を起こす大きな要因であることは間違いありません。例えば、ノルウエーで行われた調査では、10年間の追跡の結果、肥満度の大きい人ほど、糖尿病の発生率が高か ったのでした。身長と体重で肥満度を計算する方法が一般的ですが、筋肉の多い人もあり、不 正確です。皮下脂肪を測ればよいのですが、幾分手間がかかります。ウエストとヒップの比を測ることは簡単な割に、重要な情報を与えてくれます。いろいろな研究では、ウエストとヒップの比が高いほど(腰がお尻と比べ太いほど)、糖尿病になりやすいのです。 都市部においては頭脳労働者が多く、積極的に運動をしないと、運動不足になりますし、以前より油濃い食事をとっていますので、簡単に肥満になります。 肉体労働に従事する人は、仕事自体が運動ですから、糖尿病にはなりにくい傾向があります。

3運動不足

運動不足の人ほど糖尿病になりやすいという報告が数多く出されています。大学時代運動選手だった人ほど、後ほど糖尿病になりやすいことが観察されてい ます。5990人の大学生を14年間追跡した成績では、よく運動して いた人ほど糖尿病になりにくいことが判明しました。糖尿病患者にとって運動療法が効果的なことは、臨床上よく知られています。運動はインスリンの効きをよくします。運動は蓄積されていたグリコーゲンを燃やし、血糖を下げます。運動は肥満を防ぎます。食後の散歩は、食後の血糖の上昇を軽くしますので、お勧めできます。激しい運動を長く続けるほど、糖尿病には効果がありますが、医師と相談してください。

4食事

食事というと、ご飯など炭水化物が糖尿病に悪いという考えが根強くありますが、これは正しくありません。炭水化物に富む食事をとっている国には糖尿病 はあまり見られず、糖尿病の多い文明国ほど、脂肪摂取が多いのです。糖尿病には脂肪に富んだ食事がよくないようです。日本の伝統的な食生活では糖尿病 が少なかったのに、食生活の洋風化が糖尿病の蔓延に拍車をかけているように 見えます。広島在住の日本人に比べ、ハワイに移住した日本人は、食事が洋風化し、肥満が増え、糖尿病の発病率が2倍になりました。

なぜ高脂肪食が糖尿病を招くのかよくわかっていませんが、動物実験によると、高脂肪食は、体重を増やしたり、体脂肪量を増やすだけでなく、体内の脂肪の分布に変化を与え、これら全てが血糖値を上昇させやすいのです。植物性脂肪をとるなら、単価不飽和脂肪酸の多い油(オリーブ油等)が、糖尿病に もいいという報告があります。魚油は糖尿病を悪化させるという報告があります。

菜食の人の方がはるかに糖尿病になりにくいというデータがあります。 肉は脂肪が多いのに比べ、野菜は繊維が多いので、血糖を上げにくいのでしょ う。食物繊維は腸からの栄養素の吸収を妨げ、高血糖を防ぎます。 砂糖は吸収が速く、直ぐ血糖を上昇させるので、糖尿病には好ましくありません。甘いものが欲しいなら、腸からの吸収の悪い糖(ソルビトール等)がよい でしょう。

アルコールが糖尿病に悪いことはよく経験されることで、アルコールは糖尿病の予防上好ましくありません。

糖尿病食として、従来は極端なカロリー制限が行われていました。しかし長い 目で見て、これは体に害をもたらします。むしろカロリーは適正にとり、内容 を変えるべきなのです。すなわち、脂肪の制限、複合炭水化物や線維を増やすことに力点を置くべきです。また糖尿病用の食品交換表を用いるのも問題です。 カロリーが同じでも、糖尿病に対する影響は違うからです。

多変量解析という方法で解析してみました。その結果、糖尿病の家族歴のある人、肥満の人、アルコールをよく飲む人、外食をする人が糖尿病になりやすいことがわかりました。定期的に運動をしている人は、糖尿病になりにくいこともわかりました。外食をする人に多いのは、外食自体があまり健康的でないためでしょう。

まとめますと、糖尿病(インスリン非依存型)を防ぐためには、適度な運動、適正体重の維持、脂肪の少ない、繊維の多い食事、ということになりましょう。 インスリン非依存性糖尿病は典型的文明病であり、日本が文明国の仲間入りを したので、増えるのは当然です。非文明的生活、すなわち、よく体を動かし、脂肪をあまりとらず、線維をとるようにし、適正体重を維持することで、かなり防げると言うことができます。たとえすでに、糖尿病・境界型糖尿病と言われていても、非文明的生活に戻ることによって、相当に改善が期待できるのです。


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