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ガン予防10ヵ条
ガンは治療するより、発病そのものを予防する方が よいことはいうまでもありません。
またその方が医療費そのものも少なくて 済みます。近年の医学の進歩により、ガンが予防可能であることがわかってきました。
1997年に世界ガン研究基金とアメリカガン研究財団が、ガン予防に関する勧告を発表しました(食物、栄養とガン予防:世界的展望)。この報告書 は670ページにわたる膨大なもので、世界中の15人の学者(日本人2人) が中心になり、ガン予防に関する最新情報が書かれています。
第1条 穀類・豆類・いも類・海藻を豊富に食べ、総摂取エネルギーの45〜60%にする。
1日に600〜800グラム(調理した量)、または7皿以上。これらはなるべく精製度の低いものが望ましい。砂糖からのエネルギ ーは、総エネルギーの5%以下に抑える。
これらの食品をよく食べている人にガンが少ないことが知られています。日本食はこれらの食品が豊富ですから、なるべく日本食を心がけるといいので す。精製度の低いものとは、玄米・胚芽米・玄麦パンなどのことです。砂糖は炭水化物食品の中でも、特に吸収がよく、とり過ぎると害がありますが、 ガンとの関係は不明です。
第2条 野菜・果物を豊富に食べ、これから総エネルギーの7%以上を摂取する。
1日当たり400〜800グラム、または5皿(1皿は約80グラム)以上の多種類の野菜や果物を食べる。
野菜・果物には、カロチン・ビタミンC・E、亜鉛・セレン・銅・マンガンなどのミネラル、フラボノイドなど、ガンを防ぐ栄養素が豊富です。野菜・果物は、あらゆるガンの発生を抑制します。必ずしも緑黄色野菜にこだわるこ となく、どんな野菜でもいいですし、どんな果物でもいいですから、たっぷり食べる習慣をつけて下さい。果物のとり過ぎは、そのまま加工しないでとる限り、ほとんど心配ありません。
第3条 肉類は1日に80グラム以下にする。
肉よりは魚のほうがましである。豆など植物性食品のみの方が、ガン予防上最善である。
肉食の多い人に、大腸ガン・膵臓ガン・乳ガンなどの、西洋型のガンが多いことが知られています。日本でも、これらのガンが増えており、食生活の洋風化が原因と考えられています。以前の日本人平均肉摂取量は、82.3グラムであり、これ以上増やすべきではありません。肉より魚を食べる方が危険は減りますが、魚・卵・牛乳などいっさいの動物性食品をとらない方が、ガンの危険は最小限になります。
第4条 脂肪をできるだけ少な目に。
動物性脂肪は0に近づけ、リノール酸を減らし、オレイン酸を増やす。オリーブ油が一番安全な油である。
動物性脂肪は西洋型のガンを増やすので、とらない方がいいのです。植物性脂肪の重要な構成成分であるリノール酸は、容易に酸化されて過酸化脂質となり、これはガンを促進しますので、お勧めできません。オリーブ油の主成分オレイン酸は、酸化されにくくよりよい脂肪酸です。実際、オリーブ油をよくとる人は、そうでない人よりも、乳ガンが半分であるという報告があり ます。ただし過剰のオリーブ油は肥満を招き、第6条に抵触する恐れがあります。
第5条 食塩を1日に6グラム以下にする。
食塩摂取の多い日本人に胃ガンが多いことはよく知られています。食塩は胃 ガンの促進因子です。1日6グラム以下とはかなり厳しい制限ではありますが、子供の時から薄味に慣らす食習慣を心がけましょう。つい食塩を余分にとってしまったら、食間に水を飲んで、食塩を一刻も早く体外に排泄しましょう。野菜・果物はカリウムが多く、体内で食塩の構成成分であるナトリウムと拮抗し、ナトリウムをより排泄してくれます。
第6条 BMIを18.5〜25に維持し、成人になって5キロ以上体重を増やさ ない。
BMI=体重kg/(身長m)2
肥満の人はガンにかかりやすいことが知られています。この理由ははっきり していませんが、肥満者のエストロジェンなどの性ホルモンが変化していることと関係があるようです。ガンにかかりたくなければ、食事と運動 に気をつけ、適正体重にコントロールしましょう。もっとも、これら10か条を守れば、自然に理想体重になります。
第7条 速歩か同程度の運動を1日1時間、週に最低1時間活発な運動をする。
長年運動をしている人は、いろいろなガンにかかりにくいのです。ある研究では、日頃の歩行で、ガンの危険が半分以下になりました。これは、 運動が免疫力を上げることと関係しているようです。運動によって体内に活 性酸素が増えるので、かえって運動は有害であるという意見がありますが、運動によって一時的に活性酸素が増えたとしても、それを処理する酵素が働いて体に害を及ぼしにくいようにしてくれるようです。
第8条 ストレスをためないようなライフスタイルを実行する。
持続的なストレスは、免疫力を弱め、ついにはガンをもたらす危険があります。まず、ストレスがたまらないように、うまくリラックスする習慣をつけ ましょう。日頃忙しくても、週末には必ず仕事から離れのんびり好きなこ とをして過ごしたいものです。ギャンブルなどでなく、スポーツなど健康的 なリラックス法を見つけましょう。
また人の生き方がガンの発生に関与しているというデータもあります。生きがいを仕事や子供など、自分の外に求めるのではなく、自分の趣味、ボラン ティア活動など、自分の内に求める生き方が、免疫力を安定させ、ガンを防ぐのによいようです。
第9条 タバコを吸わない。
タバコの煙には、多数の発ガン物質が含まれています。また、タバコはガンの促進因子でもあります。いうまでもなく、日本は世界有数の喫煙大国であり、そのために、特に男性の肺ガンが激増しています。問題は受動喫煙です。タバコの副流煙(タバコの先から空中に漂う煙)の方が発ガン物質が多く、そばの人をガンに引き込みます。ある報告では、男性が喫煙している場合、その妻は2倍肺ガンになります。
第10条 アルコールをとらない。
どうしても飲む場合は、男性は2ドリンク以下、女性は1ドリンク以下に抑える。1ドリンクとは、ビールなら大きめのグラス1杯(250ml),ワインならワイングラス1杯(100ml), ウイスキーならシングル(25ml),日本酒ならお銚子半分(90ml)く らい。従って、男性では平均して日本酒は1日1合、ビールなら中びん1本。 アルコールがガンの促進因子であることはあまり知られていませんが、ガンにかかりたくなければ、禁酒の方がいいのです。アルコールが人をリラックスさせる効果があることは認めますが、どうしても度を超して飲んでしまう人が多 すぎます。上記の量で止められる自信がなければ、アルコールは止めましょう。君子危うきに近寄らず、です。
自分のライフスタイルの中で、不十分な点を吟味し、補強しましょう。これらの10箇条をできるだけ守るようにすれば、ガンの大半を防ぐことができると考えています。今までに数百人のガンの患者さんとお会いし、この 10箇条をきちんと守っている人は全くいなかったからです。